小児泌尿器科
はじめに
開業して約半年が経過いたしました。
意外だったのは勤務医時代とは違った年代の患者さんも数多くご来院されることです。
小児泌尿器科の患者さんが多いこともその一つです。
そこで、日常よくある小児泌尿器科疾患について説明していこうと思います。
小児泌尿器科専門ではないため、簡潔な説明とさせていただきますね。
その他疑問点があれば、クリニックに来院していただければ幸いです。
2022年10月 はら泌尿器科クリニック 原 浩司
亀頭包皮炎
おちんちんの先(亀頭)と包皮の間に炎症を起こしたものを亀頭包皮炎といいます。子供の鬼頭は普段は包皮で覆われています(生理的包茎)。そのため亀頭と包皮の間にカスがたまりやすいために起こります。おちんちんの先が赤く腫れたり、膿が出たりします。排尿時の痛みもあります。
治療
包皮をむいて、膿を出して洗浄した後で抗生剤と炎症止めのローションを塗ります。
包皮が反転できないこと、手で包皮をむいて亀頭が顔を出さないものを真性包茎といいます。包皮炎を繰り返す場合や排尿が出にくい場合には手術が必要です。
※真性包茎については次項で説明させていただきます。
真性包茎
包茎とはおちんちんの先端の包皮口が狭いために包皮をむいて亀頭を完全に露出できない状態をいいます。包皮は外板と呼ばれる外から見える皮膚の部分と、おちんちんの先端で内側に折り返している内板と呼ばれる部分からなり、幼児期はこの折り返しの部分(包皮口)が狭くなっています。生まれてきた赤ちゃんは包茎の状態が正常です。この時期は包皮と亀頭と包皮表面とが完全には分離しないでくっついています。包皮がむけない状態がいつ頃まで続くのかは子供によって様々です。思春期までは包皮を完全にむいて下げることが出来ない男の子は少なくありません。逆に言うと思春期を越えた男子では包皮はスムーズにむいて下げられる場合が多いと言えます。したがって包皮がむけないと言う理由だけで子供のときに手術や特別な治療は不要だと考えます。
では手術の適応となる場合はどんな場合でしょうか?
排尿時の包皮のふくらみ(バルーニング)
排尿時におちんちんの先端が風船状(バルーン)にふくらむことがあります。
そのためおしっこがあらぬ方向に飛び散りトイレを汚して困るということはありますが、それ自体で尿の出が悪くなって健康状態に影響するようなことは起こりません。
繰り返す包皮炎
3才前後よりおちんちんの先端が赤く腫れて痛がる、ということを男の子は経験することが少なくありません。これは包皮先端の炎症で亀頭包皮炎と呼びます。このような炎症は短期間の抗菌薬の内服や塗り薬でよくなります。軽いものなら温浴だけでもなおります。何度も繰り返す場合を除けば包茎の治療は必要ないと考えられています。
最近ではバルーニングを起こすような症例でもステロイド軟膏で経過観察することも多くなりました。
大まかに手術が必要なケースを説明してきましたが、子供の包茎で手術が必要なケースはほとんどありません。包茎手術の多くは風習・宗教上の理由そしてご両親の不安が多いとされています。最近ではバルーニングを起こすような症例でも用手的に包皮をむく治療(包皮ほんてん指導)が推奨されているようです。これは包皮の外側を手でずり下げて亀頭を露出する方法です。包皮をずり下げてむけなくなる狭い部分に少量のステロイドの入った軟膏を朝晩2回薄く塗ります。最初は包皮表面から少量の出血を伴う場合があります。一定期間以上(少なくとも2週間以上)継続する必要があります。
できるだけ簡潔に述べてきましたが、その他疑問があれば遠慮なくご相談ください。
陰嚢水腫
陰嚢水腫とは精巣の周囲に液体がたまって陰嚢(いわゆるたまのふくろ)がふくらんだ状態を言います。生まれたばかりの男の赤ちゃんでは比較的高頻度に認められます。
陰嚢水腫は、1歳までにほとんど治ります
陰嚢水腫は何歳でもみかけますが、生まれたての赤ちゃんや乳児期には特に多く、乳児健診で指摘されることがよくあります。水腫は放置しても体に害はありません。1歳までは95%が自然に治りますので何もせずにみています。しかし、水腫か鼠径ヘルニアかの診断は意外と難しいようです。まれにですが水腫とヘルニアとが合併していることもあります。陰嚢水腫といわれたら、正確な診断をつける意味で、小児外科を受診されることをおすすめします。陰嚢水腫から鼠径ヘルニアになることはまず考えられません。
1歳以上になると、手術が必要
1歳以上になると自然に治ることは難しくなります。体に害はありませんが、美容的な意味では手術が必要になります。針で突いて水を抜くだけでは、1~2日で水がたまってきますので、全く意味がなく痛みや感染症のリスクがありますのでお勧めはしません。当院では愛知県の第一日赤病院の小児外科と連携していますが、ご希望があれば岐阜市内の病院にもご紹介が可能です。
夜尿症
夜尿はありふれた子供の症状です。
- 性格や育て方は夜尿症とは関係ありません。
精神論・根性論で起きるものではなく、またどうにかなるものでもありません。 - 治療の原則は「起こさず、焦らず、怒らず、褒める、比べない」です。
お子さまや自分を責めないでください。 - 治療の中心は「子供」です。
夜尿症の治療では、子供が中心です。本人の治そうという意欲と保護者の協力が何より大事です!
それでは、一般的な診療の流れを説明しますね。
生活改善をするために現在の生活習慣を確認
昼間にもおもらしをする、便をもらしてしまうなど臓器そのものに疾患がないかをエコーにて確認します。
なかなか自分の子供では客観的な判断が難しいですし、焦ってしまいますね。
原因としては寝ている間に作られる尿の量が多すぎたり、尿を十分に貯められないことが関係しています。夜尿症の場合、膀胱が尿であふれそうになっても起きられないため、寝ている間に尿もれをしてしまう事があります。一番は子供の膀胱はまだ小さく尿をそこまで溜められないことも関係しているようです。
当院では排尿日誌を利用して生活習慣や排尿量を確認しています。
具体的な治療方針として
夜尿症の治療としてはまず生活指導や行動療法を開始します。
効果が乏しい場合には抗利尿ホルモン剤投薬または夜尿アラーム療法を追加します。
基本的には、排尿日誌をもとにして、生活指導及び行動療法として就寝前にトイレに行くことや夜間の水分摂取の制限を行います。
生活指導の他に積極的な治療について説明します。
(ちなみに当院ではこれらの治療は積極的には行っていませんのでご了承ください)
デスモプレシンという抗利尿ホルモン剤は夜間尿量を減少させる効果のある薬剤で就眠前に使用します。舌下投与で容易に溶ける口腔内崩壊錠ですので水なしでも容易に服薬できますが、水中毒を防ぐために就眠前2~3時間以内の水分制限が必要となります。アラーム療法は濡れたら鳴るアラームで子どもさんを夜尿直後に起こす治療で、自分で起きない場合は家族の協力が必要となります。この治療がなぜ夜尿に有効かは実のところ分かっていませんが、多くの場合は朝まで夜尿をせずに持つようになり、睡眠時の膀胱容量が増加すると考えられているそうです。
最後に治療の原則をもう一度。
起こさず 焦らず 怒らず 褒める 比べないです♪