自己導尿

自己導尿とは

自己導尿とは、排尿障害などの原因で尿を上手に出せなくなった場合に、それを助ける手段の一つです。具体的には、尿が膀胱にたまったら、自らの手でカテーテルと呼ばれる管を尿道から入れて尿を排出します。

自己導尿の目的

尿は腎臓で血液から不要な老廃物をろ過して作られ、尿管を通って膀胱に流れていきます。膀胱に一定量の尿がたまると尿道を通じて体外へ排出されます。
なんらかの原因によって尿が正常に排出されないと、膀胱内の圧力が高まって腎臓へ逆流してしまい、腎臓機能に障害を与えてしまいます。
これを防ぐためには尿を適切な間隔で排出することが必要ですが、自己導尿は膀胱に優しく尿路感染の危険も少ないため、有効な方法となります。

通常の排尿
通常の排尿
排尿障害
排尿障害
自己導尿による排尿
自己導尿による排尿

自己導尿のメリット

  • 本来の排泄方法とほぼ同じなので通常の生活を送りやすい
  • 膀胱機能の維持や改善に繋がることがある
  • 尿路感染症などの感染リスクが少ない

自己導尿のメリットは、膀胱に尿を溜めてから出すという、本来の機能を活かした処置にあります。
そのため、膀胱の機能回復に繋がる可能性があるというのが最大のメリットです。

自己導尿のデメリット

  • 自分、もしくは介護者が処置を覚える必要がある
  • 排尿処置が1日複数回になることもある
  • 外出の際に荷物が増える

女性の場合、自分では処置の様子が見えにくいため、やりづらさを感じる方も多いです。
また、毎回カテーテルを交換しなくてはならないため、その分の費用がかかることもデメリットの一つです。

自己導尿の適応

  • 神経因性膀胱
  • 脊椎病変(脊髄損傷、二分脊椎など)の神経因性膀胱
  • 婦人科や外科の手術後の神経因性膀胱
  • 前立腺肥大症

薬物治療をしても、膀胱内の尿を自然に出すことができない症例が適応になります。

自己導尿にあたって

  • 1日の導尿回数は医師の指示に従ってください。残尿量が少なくなったと感じたときや、50ml以下になった場合も、自分の判断で中止せずに、医師に相談してください。
  • 1日1,000ml~1,500mlを目安に水分をとるように心がけましょう。水分制限がある人は水分摂取量を医師に確認してください。
  • 排尿日誌をつけて、排尿量と残尿量を把握しましょう。自分で少しでも排尿できる人は、まず排尿し、その量を計測・記録します。その後に導尿し、量を確認して記録しましょう。
  • 排尿日誌は受診時に持参してください。

自己導尿の手順

男性と女性とで自己導尿の手順は少し異なります。詳細は以下の内容を参考にしてください。 資料と動画も掲載していますので、ぜひご覧ください。

自己導尿の手順(男性の場合)

  • 流水と石鹸で手指を十分に洗浄します。
  • 尿道口(陰部)を清潔にします。
  • カテーテルを開封します。
  • 導尿しやすい姿勢をとり、カテーテルを取りやすい位置に置きます。
  • 片手でペニスを持ち上げるように持ち、カテーテルを尿道口に挿入します。力を抜いて深呼吸しながらゆっくり挿入してください。
  • ペニスを下に向けて、尿を出します。
  • 残尿は感染の原因になるため、尿の流出が少なくなったら、腹圧を少しかけて、尿の流出をはかってください。
  • カテーテルを少し引き、尿の流出状況を見ながら、少しずつカテーテルを動かし、静かにカテーテルを引き抜きます
  • 使用したカテーテルは再利用せずに廃棄してください。(各自治体のごみの廃棄方法に従ってください。)

男性用資料はこちら

自己導尿の手順(女性の場合)

  • 流水と石鹸で手指を十分に洗浄します。
  • 尿道口(陰部)を清潔にします。
  • カテーテルを開封します。
  • 導尿しやすい姿勢をとり、カテーテルを取りやすい位置に置きます。
  • 鏡で尿道口を確認し膀胱内にカテーテルを挿入します。鉛筆を持つようにカテーテルを持って、尿道口から4~6cm挿入します。力を抜いて深呼吸しながらゆっくり挿入してください。
  • カテーテルの挿入後、鏡を外し、尿を排出します。
  • 残尿は感染の原因になるため、尿の流出が少なくなったら、腹圧を少しかけて、尿の流出をはかってください。
  • カテーテルを少し引き、尿の流出状況を見ながら、少しずつカテーテルを動かし、静かにカテーテルを引き抜きます
  • 使用したカテーテルは再利用せずに廃棄してください。(各自治体のごみの廃棄方法に従ってください。)

女性用資料はこちら

上手く導尿する方法(女性の場合)

女性の場合、尿道口を確認することが困難です。鏡を用いる方法もありますが、暗いトイレで鏡を用いるには懐中電灯などの道具が必要になり、導尿のために常に多くの物品を持ち歩かなくてはならなくなります。
尿道口を確認するための最も簡単な方法として、実際に指で触れて覚える方法があります。
間違って膣にカテーテルが入ってしまう場合には、あらかじめ指で膣をふさぎながら導尿するとよいでしょう。
また、あらかじめタンポンを膣に挿入しておき、膣と尿道口の違いを確認する方法もあります。

生理のときはどうしよう?

生理の場合には、どうしても血液が付着してしまい、外陰部の清拭に時間を要してしまいます。ウォシュレットにより陰部洗浄を行うことも有効ですが、タンポンを用いると血液が付着しにくく便利です。